健康診断の受付を、24年やっています。
受付の机に立っていると、人が集まってくる時間は、だいたい決まっています。健診がスタートする時刻です。
午前と午後、どちらで受けるか迷っている方へ。受付から見えている「時間の流れ方」を書きます。
先に、ぼくが書けないことを書いておきます。食事を何時までに済ませるか、飲み物や薬をどうするか。こうした具体的な指定は、受ける健診ごとに違います。ここは、お手元の案内が正解です。この記事では、受付に立っていて見えることだけを書きます。
健康診断は、午前と午後でどっちがいい?
ぼくの答えは、「何を早くしたいかで変わる」です。
逃げた答えに聞こえるかもしれません。理由は、こうです。
「早く帰れる」と「短く済む」は、同じではありません。
朝いちばんに行けば、帰れる時刻は、あとから来た方より早くなることが多いです。けれど、会場にいる時間は、長くなる傾向があります。
どちらを取りたいのかを先に決めておくと、時間の選び方で迷いにくくなります。
バリウムの検査があるなら、午前です
ここだけは、はっきり言えます。
その日にバリウム(胃の検査)が入っているなら、選べるなら午前です。
理由は、食事です。
バリウムは、胃の中が空っぽの状態で受ける検査です。ここでいう空腹は、「朝ごはんを抜いた」という意味ではありません。
最後にカロリーのあるものを口にしてから、10時間以上あいていること。これが空腹の状態です。
午前に受けるなら、前の日の夜で終わりです。寝ているあいだに、10時間が過ぎていきます。
午後に受ける場合は、そうはいきません。朝食に制限がつきます。何時までに食べ終えるか、何を食べていいか。そこまで決められます。
つまり、午後のバリウムは、当日の朝から気をつけることが増えます。午前なら、寝て起きて、そのまま来ていただけます。
そして、ここがいちばん大事なところです。
食事をとってきた場合、バリウムの検査は中止になります。
腹部の超音波検査(エコー)が入っている場合も、同じく中止になります。
健康診断そのものをお断りすることは、ありません。ほかの検査は、受けていただけます。ただ、この2つは、その日は受けられません。
腹部の超音波は、検査項目に入れている事業所がそれほど多くありません。バリウムも超音波も、法律で必ずやると決められた検査ではないので、会社によってあったりなかったりします。自分の健康診断に入っているかどうかは、届いた案内で確かめてください。
朝ごはんを食べてきた、というだけで、その1年ぶんの胃の検査がなくなります。
食事をとったかどうかは、受付で必ず確認します。ここは、その日いちばん多く聞くことのひとつです。
ただし、何時までに何を、という中身は、健診をやっている会社によって違います。お手元の案内に書いてあるとおりにしてください。
食事は、血液検査にも出ます
バリウムと超音波だけの話ではありません
健康診断は、基本的に安衛法(労働安全衛生法)をもとに実施されています。その中に、血液の検査が入っています。
血液の検査には、血糖が含まれます。これは空腹時血糖といって、空腹の状態で測ることを前提にした数値です。
血糖だけではありません。コレステロールと中性脂肪も入っています。こちらも、食事の影響を受けます。
事業所によっては、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)という、食事に影響されない血糖の検査がついていることもあります。ただ、それがあってもなくても、基本は空腹をおすすめしています。
食べてきた日の数値は、何が困るのか
結果の紙に載るかどうかは、また別の話です。
困るのは、そこではありません。
食べてきた場合、その数値は参考値になってしまいます。
たとえば、数値が高く出たとします。そのとき、それが食事のせいなのか、それとも本当に何かが潜んでいるのか。そこの判断ができません。
高く出たのに「食べてきたからでしょう」で流れてしまう。逆に、食べてきただけなのに、心配なまま1年を過ごす。どちらも、もったいないと思います。
ぼくは受付です。数値そのものには立ち入りません。いくつなら異常か、何の病気なのか。そこは医師の領域で、ぼくの口から言えることではありません。
ただ、受付に立っていて思うことがあります。
せっかく受けるのだから、意味のある数字にして帰ってほしい。
年に一度しかない機会です。食事をひとつ我慢するだけで、その数字が「判断できる数字」になります。
ただし、水と薬は別です
ここは、いちばん大事なところです。
空腹の話を書いてきましたが、水分と薬は、それとは別に考えてください。
・水は、適度に飲んでください
我慢しないでください。熱中症や脱水になっては、元も子もありません。とくに夏場です。
ただし、飲んでいい量と時間には決まりがあります。「何時までに、どのくらいまで」と指定されていることが多く、検査の内容や、健診をやっている会社によって違います。ぼくの会社の場合は、朝7時ころまでにコップ1杯程度です。
・血圧の薬などは、必ず飲んでください
「空腹で来てください」と書いてあったから、薬もやめておこう。これは、しないでください。
自己判断で止めるのが、いちばん危ないです。
飲む時間や、飲んでいいかどうかの指示は、健診機関の案内に書かれていることが多いです。そこに書いてあれば、それが正解です。書かれていない、迷う、という場合は、当日の朝ではなく、前もって確かめてください。
いちばん混むのは、何時ごろ?
健診がスタートする時刻です。
始まる時間に合わせて、人が集まります。「朝いちばんに行けば空いている」と思われがちですが、ぼくが見ている現場では、そうはなりません。むしろ、そこがいちばん混みます。
混む日は、受付に30人以上が並ぶこともあります。その日の列の最後のほうだと、30分以上待つこともあります。
ただ、毎回そうなるわけではありません。混むのは、混む日です。
混んでいる日の朝は、10番目より後ろに並んだ方に、こちらから先に声をかけています。
「今混んでます。相当時間がかかりますので、よろしくお願いします。長い方で1時間を超える可能性があります。よろしいですか?」
こう伝えて「じゃあ、やめます」と言われたことは、24年で一度もありません。その話は「今日は混んでます」と言われても、なぜ誰も帰らない?に書きました。
「早く帰れる」と「短く済む」は、何が違う?
たとえば、あくまで目安ですが、こんな差が出ます。
受付 9:00 → 終了 10:30(会場にいた時間 1時間30分)
受付 10:30 → 終了 11:30(会場にいた時間 1時間)
9時に来た方は、1時間早く帰れます。10時30分に来た方は、会場にいた時間が30分短い。
同じ日の、同じ会場で、こういうことが起きます。
もちろん、実施する会社や検査の項目、その日の人数で変わります。覚えておいてほしいのは数字そのものではなく、「帰る時刻」と「会場にいる時間」は、別々に動くというところです。
仕事に戻る時間が決まっているなら、帰る時刻で選ぶ。待つこと自体がつらいなら、会場にいる時間で選ぶ。
「午前か午後か」の前に、この二つを分けて考えると、選びやすくなります。
時間を指定されているときは、どうする?
その時間に合わせてください。
最近は、朝に人が集中しないように、時間割を組んで混雑をやわらげている現場が多くなりました。「何時から何時のあいだに来てください」という形です。
時間割があるなら、会場全体の流れは、その時間割を前提に組まれています。午前か午後かを自分で選ぶより、指定された時間に来ていただくのが、いちばん確実です。
ここからは、ぼく個人の話です。
時間割があると、受付に立っているぼくは「時間どおりに進めなければ」と思います。その中身は、何分遅れているか、というより「このままじゃ捌けない」という感覚に近いものです。
予約の時間より、かなり早く着いたほうがいい?
早く着きすぎても、そのぶん早く始まるわけではありません。
検診車で会場に着いた時点で、もう人が待っている。そういうことは、24年やっていても数えるほどしかありません。早く着きすぎると、こちらの準備がまだ終わっていないこともあります。
早く着けば順番は前になりますが、健診が始まる時刻そのものは変わりません。
早く家を出るなら、そのぶん、届いた案内をもう一度読んでおくほうが、当日の役に立つと思います。
食事の決まりは、午前と午後で違う?
違います。バリウムのところで書いたとおりです。
ただ、具体的な時刻は、ぼくの口から「こうです」とは書けません。
食事を何時から控えるか、飲み物はどうか、薬はどうするか。こうした指定は、受ける健診ごとに違います。同じ健康診断でも、実施する会社によって、やり方はひとつではありません。
ここで一般的な時刻を書いて、あなたが受ける健診では違った、というのがいちばん困ります。
だから、午前と午後で迷ったら、まず届いた案内を開いてください。受ける時間によって決まりが変わるなら、それも時間を選ぶ大事な材料になります。
分からないことは、当日の朝ではなく、前もって勤め先か、案内を出したところに確かめておくのが確実です。
体調が悪い日に当たったら?
選んだ日が近づいて、体調がすぐれない。そういう日もあると思います。
健診は、「いまは元気だけれど、隠れた異常がないか」を見る場です。いまつらい症状を診てもらう場所ではありません。
ぼく自身は、体調が悪い日は、無理をして受けなくていいと考えています。健診は、別の日に受けられるからです。
日を改められるかどうかは、勤め先や案内で確認してください。気になる症状があるときは、医療機関にご相談ください。
このことは健康診断の当日に体調が悪いとき、受けるべき?に詳しく書きました。
まとめ
・午前か午後かより先に、「早く帰りたい」のか「待つ時間を短くしたい」のかを決める
・バリウムがあるなら、選べるなら午前。午後は朝食に制限がつきます
・空腹とは、最後にカロリーのあるものを口にしてから10時間以上
・食事をとってくると、バリウムと腹部の超音波検査は中止になります。健診そのものは断りません
・食事は血液検査にも出ます。血糖は空腹時血糖。コレステロールと中性脂肪も食事の影響を受けます
・食べてきた日の数値は参考値になり、食事のせいか病気かの判断ができません
・水は適度に飲んでください。ただし量と時間の指定があります。案内を確認してください
・血圧の薬などは、必ず飲んでください。自己判断で止めないこと
・混みはじめるのは、健診がスタートする時刻
・朝いちばんは、帰れる時刻は早いことが多いが、会場にいる時間は長くなりやすい
・時間を指定されているなら、その時間に合わせるのがいちばん確実
・食事や薬の決まりは、受ける健診の案内が正解
ぼくも50歳で、受ける側になりました。健診の日は、朝から少し身構えます。
待つ時間の長さそのものより、「いつまで待つのか分からない」ことのほうがつらい。これはクレームは「待ち時間」ではなく「不安」から生まれるにも書きました。混み方を先に知っておくだけでも、当日の待ち時間の見え方は変わると思います。
よくある質問
Q. 健康診断は、午前と午後どちらが空いていますか?
A. ぼくが見ている現場では、健診がスタートする時刻に人が集まります。「朝いちばんなら空いている」とは限りません。時間割が指定されている場合は、その時間に合わせてください。
Q. 朝いちばんに行けば、早く終わりますか?
A. 帰れる時刻は、あとから来た方より早いことが多いです。ただ、会場にいる時間そのものは、長くなる傾向があります。
Q. バリウムの検査は、午前と午後どちらがいいですか?
A. 選べるなら午前です。午後に受ける場合は、朝食に制限がつきます。何時までに、何を食べていいかまで決められるので、当日の朝から気をつけることが増えます。
Q. 「空腹で来てください」とは、どのくらいですか?
A. 最後にカロリーのあるものを口にしてから、10時間以上あいている状態です。具体的な時刻の指定は、お手元の案内に従ってください。
Q. バリウムがない日でも、空腹で行ったほうがいいですか?
A. おすすめしています。血液の検査に、空腹時血糖、コレステロール、中性脂肪が入っているからです。どれも食事の影響を受けます。
Q. 食べてきてしまったら、どうなりますか?
A. 健康診断そのものをお断りすることはありません。ただし、バリウムの検査と、腹部の超音波検査(エコー)は中止になります。血液の検査は受けていただけますが、空腹時血糖やコレステロール、中性脂肪は参考値になってしまいます。食事をとったかどうかは、受付で必ず確認します。そのまま答えてください。
Q. 水も飲んではいけませんか?
A. 水は、適度に飲んでください。我慢して熱中症や脱水になるほうが危険です。ただし、飲んでいい量と時間の指定があります。ぼくの会社の場合は、朝7時ころまでにコップ1杯程度です。何をどのくらい飲んでいいかは、お手元の案内を確認してください。
Q. 毎日飲んでいる薬は、どうすればいいですか?
A. 血圧の薬などは、必ず飲んできてください。自己判断で止めないでください。飲む時間の指示があれば、案内に従ってください。迷うときは、前もって健診機関か勤め先に確認してください。
Q. 午後に受けるとき、朝ごはんは食べてもいいですか?
A. 受ける健診によって決まりが違うので、ここでは答えられません。届いた案内を確認し、分からなければ前もって勤め先か、案内を出したところに問い合わせてください。
Q. 混んでいると言われたら、出直したほうがいいですか?
A. 出直せるかどうかは、勤め先や案内によります。ぼくの現場では、混んでいるとお伝えしても、その場で待って受けていく方がほとんどです。
日々の現場での気づきは、Xでも書いています。
@genba50ai
