朝いちばんが混む日は、受付に並ぶ人数を見た時点で、だいたい分かります。
健康診断の受付を24年やっています。混雑しそうな朝は、10番目より後ろに並んだ方に、こちらから先に声をかけることにしています。
「今混んでます。相当時間がかかりますので、よろしくお願いします。長い方で1時間を超える可能性があります。よろしいですか?」
こう伝えて、「じゃあやめます」と言われたことは、24年で一度もありません。
「混んでます」と言われたら、帰ったほうがいい?
結論から言うと、ぼくは「先に言うだけ」で、帰るかどうかを決めてもらう場面を、実際にはほとんど経験していません。
伝えた瞬間、多くの方は少し困った顔をします。でも、そこから列を離れる方は見たことがありません。
なぜ、先に「混んでます」と伝えるのか
正直に言うと、これはお客様のためだけの案内ではありません。
先に伝えておかないと、あとで「そんなに待つなんて聞いてない」というクレームになります。「クレームは『待ち時間』ではなく『不安』から生まれる」という記事にも書きましたが、長さそのものより「知らされていない」ことのほうが、不満につながりやすいと感じています。
だから、悪い知らせほど先に言う。これは受付をやっていて、いちばん学んだことのひとつです。
なぜ、誰も帰らないのか
ここから先は、ぼくの推測です。統計を取ったわけではありません。
健診に来る方の多くは、「会社に言われたから来た」「決められた期間内に受けないといけない」という立場です。自分で選んで来ているというより、来ること自体が仕事の一部になっています。
だとすると、「混んでいるから今日はやめる」という選択肢は、最初からあまり用意されていないのだと思います。1時間待ってでも今日この場で終わらせたほうが、後日また休みを取って出直すより楽だと考える方が多いのではないか。そう見ています。
同じ会場に、人間ドックの方もいます
ぼくが出ている巡回の健診には、人間ドックを受ける方もいらっしゃいます。
ただ、これは個人で申し込んで来た方ではありません。勤め先の健診のメニューにドックがあり、その対象になっている職員の方です。自分から希望して受ける方もいますが、会社の健診を受けに来ているという点は変わりません。
つまり、会場に並んでいる方は、検査の中身こそ違っても、立場は同じです。みなさん、会社の健診で来ています。
だとすると、さきほどの「今日で終わらせたほうが楽だ」という見方は、会場にいるほとんどの方に当てはまることになります。列を離れる方を見たことがないのも、そのせいかもしれません。
朝いちばんに行けば、早く終わりますか?
これはよく聞かれます。ただ、この質問には二つの意味が混ざっています。
帰れる時刻は、早くなることが多いです。朝いちばんに来た方は、あとから来た方よりは早く終わります。順番が前なので、そこは想像どおりです。
ただし、その場にいる時間は、長くなる傾向があります。混みはじめるのは、健診がスタートする時間だからです。始まる時刻に人が集まるので、そこに並ぶと、待つ時間そのものは長くなりやすいのです。
たとえば、こんなイメージです。
9時に受付をした方は、終わるのが10時30分ごろ。
10時30分に受付をした方は、終わるのが11時30分ごろ。
先に来た方のほうが、1時間早く帰れます。でも、会場にいた時間は、あとから来た方のほうが30分短い。あくまで目安で、会場や検査の項目によって変わりますが、こういう差が出ます。
つまり「早く帰れる」ことと、「短く済む」ことは、別です。記事のはじめに書いた「長い方で1時間を超える可能性があります」という声かけは、まさにこの時間帯に並んだ方に向けたものです。
ちなみに、検診車が会場に着いた時点でもう人が待っている、ということは、24年やっていても数えるほどしかありません。早く着きすぎても、こちらの準備がまだ終わっていないのです。
最近は、朝の混雑を減らすために時間割を組む現場も増えました。時間が決められているなら、その時間に合わせて行くのが、いちばん確実だと思います。
「先に言う」は、昔から得意だったわけではない
正直に言うと、ぼく自身は昔からズケズケ言えるタイプではありません。どちらかというと繊細なほうだと思っています。
それでも「悪い知らせを先に言う」ことだけは、24年のあいだに身についた数少ない技術です。曖昧にごまかすより、先に伝えるほうが、結局は相手のためになると、現場で覚えました。
まとめ:悪い知らせほど、先に言う
24年やってきて思うのは、次のことです。
・「混んでます」は、お客様のためだけでなく、あとのクレームを防ぐためでもある
・先に伝えても、離脱した人はゼロ
・会場に並んでいる方は、みなさん会社の健診で来ている。人間ドックの方も、勤め先のメニューとして受けている
・朝いちばんは、帰れる時刻は早い。ただし、その場にいる時間は長くなりやすい
見通しを伝えることは、時間を減らすことより先にできる仕事です。
よくある質問
健診の待ち時間はどれくらいですか?
会場や項目、時間帯によって大きく変わります。ぼくの現場では、混雑時に最後尾で30分以上待つこともあります。目安を知りたい場合は、当日受付で聞くのがいちばん確実です。
混雑していると言われたら、日を改めたほうがいいですか?
日を改められるかどうかは、勤め先や会場の案内を確認してください。ぼくの現場では、その場で待って終える方がほとんどです。
朝いちばんに行けば、必ず早く終わりますか?
「早く帰れますか」という意味なら、あとから来た方よりは早く終わることが多いです。ただし、その場にいる時間そのものは長くなる傾向があります。混みはじめるのが、健診のスタートする時間だからです。時間が決められている場合は、その時間に合わせるのが確実だと思います。
巡回の健診では、人間ドックも受けられますか?
ぼくが出ている会場には、人間ドックを受ける方もいらっしゃいます。ただしこれは、勤め先の健診のメニューにドックが入っている場合です。個人で申し込んで受けるものとは違います。ご自身が対象かどうかは、勤め先にご確認ください。
受付で「混んでます」と言われたら、正直に答えたほうがいいですか?
はい。無理をせず、体調や予定を伝えてもらえれば、こちらも案内の仕方を変えられます。
日々の現場での気づきは、Xでも書いています。
👉 @genba50ai
