ぼくは、健康診断の仕事を24年やっています。受付と、検診車の運転です。
現場には、ぼくよりずっと若い同僚が何人もいます。ありがたいことに、年下の人ほど気さくに話しかけてくれます。それが、この仕事を続けてこられた理由のひとつだと思っています。
ただ、24年やっていても、知らないことはいくらでもあります。
そして最近、それが仕事の外にも増えました。AIです。
50歳になってから、ぼくはAIを使い始めました。パソコンが得意なわけではありません。うまくなったとも、まだ言えません。それでも続いているので、なぜ続いているのかを一度書いておこうと思いました。
50代がAIでつまずくのは、操作が難しいからですか?
ぼくの場合は、違いました。
画面を開いて、文章を打ち込む。やることだけを見れば、それほど難しくありません。むしろ、機械の操作としては簡単なほうだと思います。
つまずくのは、その手前です。
「これ、どうやるんですか」と、口に出すところです。
「わからない」と言うのは、なぜこんなに気が重いのか
ここから先は、ぼくの考えです。事実ではなく、24年ひとつの業界にいる人間の見方として読んでください。
長くやってきた人ほど、「わからない」と言うのに体力がいると思っています。
24年いる場所では、なおさらです。周りは「この人は知っているだろう」という前提で、こちらを見ています。その前提を、自分から崩しに行くことになるからです。
だから、覚えられないのではなくて、聞けないまま止まる。
ぼく自身、肩書や立場に怯えてしまうところがあります。えらい人の前で「わかりません」と言うのが、いまだに苦手です。これは、AIに限った話ではありません。
年下の同僚に教わるのは、恥ずかしいことですか?
答えを先に書くと、恥ずかしくはありません。
役に立つのは、理屈ではなくて順番だと思っています。先に自分の知らないことを言ってしまうと、そのあとの会話が楽になります。
「ぼく、これ分かってないんですよ」と、最初に置いてしまう。すると相手も、説明のどこから始めればいいか分かるので、教えるほうも楽になります。
これは、健診の会場で受診者の方に案内するときと、実は同じでした。
分かっている前提で話しかけられるのが、いちばん困るんです。「ご存じですよね」という顔で説明を始められると、聞き返せなくなる方がいます。だから、ぼくは知らない前提で説明するようにしています。
自分が教わる側になったとき、そのありがたさが分かりました。
会社がAIを配れば、現場は使うようになりますか?
ここからは、ニュースを読んで思ったことです。
長野県伊那市に、ハナマルキという、みそのメーカーがあります。創業108年。
この会社が、全社員およそ290人にGoogleの生成AI「Gemini」を開放したそうです。そして、使っている人の割合(ログイン率)を86%まで高めて維持していると、記事にありました。
創業108年のみそメーカー、ハナマルキ(長野県伊那市)の取り組みにある。同社は、全社員約290人に米Googleの生成AI「Gemini」を開放し、利用率(ログイン率)を86%まで高めて維持している。
(ITmedia ビジネスオンライン/2026年9月3日)
数字も立派ですが、ぼくが読んで足を止めたのは、そこではありませんでした。
33%から86%へ。108年の会社が変わった順番とは?
同じ記事に、こう書かれていました。
この会社は、取り組みの初めのころ、AIに個人情報や社内情報を入れることを「禁止」していたのだそうです。慎重すぎるくらい慎重に始めて、そこからログイン率が33%、そして86%へと上がっていった。
つまり、最初から前のめりだったわけではありません。
そして、こうも書かれていました。
70代の会長が、AI勉強会に参加した。
ぼくが足を止めたのは、そこでした。
新しい道具は、配って終わりにはなりません。マニュアルを渡して「使ってください」と言っただけで使われるなら、どの会社も苦労していないはずです。
いちばん長くやってきた人が、自分も混じって覚える。そこまでやって、やっと現場のものになるんだと思います。
70代の会長が勉強会の席にいる。それを見た社員が、「じゃあ自分も分からないと言っていいんだな」と思う。ぼくには、そう読めました。
これはぼくの読み方であって、記事にそう書いてあるわけではありません。ただ、24年ひとつの現場にいた人間としては、そこがいちばん腑に落ちました。
なお、この記事のタイトルには「3つの工夫」とありますが、その中身は会員登録が必要な部分に書かれていて、ぼくはそこまで読んでいません。ここに書いたのは、無料で読める範囲にあったことだけです。
いちばん驚いたのは、現場の担当者が自分でツールを作っていたこと
同じ記事に、もうひとつ、ぼくが読み返した部分がありました。
現場の担当者が、アプリ開発ツールを使って、レシピを検索するツールを自分で作ったそうです。
情報システムの部署ではなく、現場の人が、です。
これは、ぼくには遠い話ではありませんでした。ぼくがやっているのも、結局は同じことだからです。会社の号令を待たずに、手元でひとつ試す。うまくいったら、次に進む。
同じことを別の記事にも書きました。「AIで仕事のやり方を変えましょう」と言われても、現場はピンとこないという話です。号令は、たいてい現場までは届きません。届くのは、隣の人が使っているのを見たときです。
ぼくがAIを続けられている、たったひとつの理由は?
答えられる相手が、24時間いるからです。
これに尽きます。
ぼくがAIに聞いていることは、たいてい大したことではありません。「この書き方で合っていますか」「これはどういう意味ですか」。そういう質問です。
同じことを聞き直しても、相手は嫌な顔をしません。ここが、ぼくにはいちばん大きいところでした。
人が相手だと、こうはいきません。3回目くらいから、こちらが気を遣います。
なお、このブログの下書きも、AIに手伝ってもらっています。これは以前の記事でも書きました。隠すことではないと思っているので、ここでも書いておきます。
50代がAIを始めるなら、最初の一歩は何がいいですか?
ぼくは専門家ではないので、正しい始め方は分かりません。ぼくの考えとして、2つだけ書きます。
1. 仕事で困っていることを、そのまま日本語で打ち込む。
うまい聞き方も、専門の言葉も、覚えてから始める必要はないと思います。返ってきた答えを見て、「ああ、こういうものか」と分かるほうが早いです。
コツを覚えてから始めようとすると、たぶん始まりません。
2. 人に見られない場所から始める。
職場でいきなり使おうとすると、「何やってるの」と聞かれます。そこで説明できないと、それだけで気持ちがしぼみます。誰にも見られない場所なら、失敗しても誰も困りません。
ぼくの座右の銘は、「出来るか出来ないかではなく、やるかやらないか」です。50歳になって、この言葉をいちばん使っているのが、まさかAIの前だとは思いませんでした。
まとめ|使えるようになるまで、付き合えばいい
ここまで書いたことを、3つにまとめます。
1. 50代がAIで止まるのは、操作の難しさより「わからないと言えないこと」のほうが大きい。これはぼくの見方です。
2. 創業108年の会社は、AIへの情報入力を禁止するところから始めて、ログイン率86%まで来た。70代の会長も勉強会に出た。これは記事に書かれていた事実です。
3. 現場の担当者が、自分でツールを作っていた。号令ではなく、手元から始まっていました。
ぼくは50歳です。この先、覚えることのほうが、覚えたことより多いかもしれません。
それでも、置いてあるだけの道具にはしたくないと思っています。
使えるようになるまで、付き合ってみるつもりです。
よくある質問
Q. 50代からAIを覚えるのは、遅くないですか?
A. 遅いかどうかは、ぼくには判断できません。ただ、ぼくは50歳で始めて、いまも続いています。記事で紹介した会社では、70代の会長がAI勉強会に参加していました。年齢で線を引く話ではないと、ぼくは思っています。
Q. パソコンが苦手でも使えますか?
A. ぼくは詳しいほうではありません。健診の現場で使っているのも、決まったソフトだけです。それでも、文章を打ち込むところから始められました。
Q. お金はかかりますか?
A. 無料で使えるものもありますし、有料のものもあります。ぼくがどれを使っているかは、また別の記事で書きます。いきなり有料から始める必要はないと思っています。
Q. このブログはAIが書いているのですか?
A. 下書きはAIに手伝ってもらっています。ただ、現場の話と、事実かどうかの確認は、ぼくがやっています。事実と違うところは、その都度直しています。この記事でも、元の記事を読み直して、確認できなかったことは書かずに落としました。
参考にした資料
70代会長も動いた 創業108年みそメーカーがGemini利用率86%を達成した「3つの工夫」(ITmedia ビジネスオンライン・2026年9月3日)
※この記事は、途中から会員登録が必要です。本記事で引用したのは、無料で読める範囲に書かれていたことだけです。
