健康診断の受付を担当していると、必ず確認することがあります。
食事をとってきたかどうかです。
食べてきたかどうかで、その日に受けられる検査が変わります。だから、受診者の方から言われるのを待たずに、こちらから確認しています。
ただ、この「食事」という一言は、広がりやすいのではないかと思っています。
食事がだめなら、水もだめなのか。毎朝飲んでいる薬も、今日は飲まないほうがいいのか。
先に、答えを3つ書きます。
・食事は、最後に食べてから10時間以上あける
・水は、適度に飲んでいい(ただし量と時間の決まりがあります)
・血圧の薬などは、自己判断で止めない
ここから先は、なぜそうなるのかを、受付を担当している立場から書きます。
ひとつ、お断りしておきます。ぼくは受付なので、検査の数値そのものや、薬の中身には立ち入りません。現場で見ていることだけを書きます。
健康診断の日、水は飲んでいい?
水は、適度に飲んでかまいません。
空腹を気にして、水までがまんする必要はありません。
がまんしすぎると、熱中症や脱水の危険があります。健診の日は、会場まで移動して、順番を待つ時間もあります。水を控えて体調をくずすほうが、よほど心配です。
ただし、飲んでいい量と時間には決まりがあります。
「何時までに、どのくらいまで」と指定されていることが多く、これは検査の内容や、健診を実施する会社によって違います。
ぼくの会社の場合は、朝7時ころまでに、コップ1杯程度です。
お茶やコーヒーなど、水以外の飲み物の扱いも、案内に書いてあります。ぼくが言えるのは、水をまったく飲まずにがまんする必要はない、というところまでです。量と時間は、お手元の案内を見てください。
血圧の薬は、健康診断の朝も飲んでいい?
血圧の薬などは、飲んでください。
自己判断でやめないでください。
「空腹で来てください」と案内に書かれていると、薬も飲まないほうがいいのだろうか、と考える方がいるのではないかと思います。
でも、健康診断のために、ふだん飲んでいる薬を自分の判断で止めるのは危ないです。健康診断は、その日1日のことです。薬は、毎日続けているものです。
薬の種類によって、扱いが違うことがあります。迷ったら、届いた案内と、かかりつけのお医者さんの指示に従ってください。
受付を担当している立場から言えるのは、「自分の判断でやめないで」というところまでです。
では、なぜ食事だけは控えるの?
食事の影響を受ける検査があるからです。
ひとつめ:バリウムの検査(胃の検査)
食事をとってきた場合、バリウムの検査は中止になります。
ふたつめ:腹部の超音波検査(エコー)
こちらも、食事をとってきた場合は中止になります。
ただ、腹部の超音波は、検査項目に入れている事業所がそれほど多くありません。バリウムも超音波も、法律で必ずやると決められた検査ではないので、会社によってあったりなかったりします。
法律で決められている定期健康診断の項目は、労働安全衛生規則 第44条にある11項目です。胸部のエックス線は入っていますが、胃のバリウムと腹部の超音波は入っていません。
自分の健康診断に入っているかどうかは、届いた案内で確かめてください。
みっつめ:血液検査
血糖(空腹のときの血糖)、コレステロール、中性脂肪は、食事の影響を受けます。
食べてくると、これらは「参考値」になります。参考値というのは、その数字だけでは判断がつかない値、という意味です。
数字が高く出たとしても、食事のせいなのか、体の状態なのかが分からなくなります。せっかく採った血液が、判断の材料にならないということです。
控えていただきたいのは、これらのための食事です。
「空腹」とは、何時間のこと?
最後にカロリーのあるものを口にしてから、10時間以上です。
「朝ごはんを抜けばいい」ではありません。
たとえば、夜の11時に食べたとします。10時間たつのは、翌朝の9時です。朝ごはんを抜いていても、時間が足りていないことがあります。
つまり、気をつけるところは、当日の朝ではなく前の日の夜です。
なお、バリウムの検査を午後に受ける場合は、朝食に制限がつきます。何時までに、何を食べてよいかまで決まっています。
選べるなら午前をすすめている理由は、こちらの記事に書きました。
健康診断は午前と午後、どっちがいい?|受付を24年やって、午前をすすめている理由
食べてきてしまったら、どうなりますか?
健康診断そのものを、お断りすることはありません。
ただし、バリウムの検査は中止になります。1年ぶんの胃の検査が、なくなるということです。腹部の超音波が入っている場合も、同じく中止になります。
血液検査は受けられますが、さきほどの参考値になります。
それでも、「食べてきてしまったから、今日はやめておきます」と帰る必要はありません。まずは受付で、正直に言ってください。
受付で食事のことを確認するのは、責めるためではありません。その日に受けられる検査を、正しく分けるためです。
決まりが違うのは、会場ではなく「健診会社」ごと
当日のやり方が違うのは、会場の都合ではありません。健診を実施する会社ごとに違います。
ここは、受ける側にとって大事なところだと思っています。
もし「会場によって違う」のなら、当日その場で確かめるしかありません。でも「実施する会社ごとに違う」のなら、前もって分かります。会社から届いた案内に、書いてあるからです。
だから、いちばん確かなのは、自分のところに届いた案内です。
「前の会社のときはこうだった」は、今回の健診にはあてはまらないことがあります。
それだけではありません。同じ会社に勤めていても、健診を実施する会社が変わっていることがあります。
しかも、受ける側の従業員に、変わったことが知らされていない場合があります。知らないうちに変わっていた、ということです。
だから、「去年と同じだろう」も、当てになりません。
受診票に同封されている案内と注意事項を、当日より前に読んでおくことをおすすめします。
当日の持ち物や、受付で聞かれることは、こちらにまとめています。
健康診断の受付では何を聞かれる?当日の持ち物と、困らないための準備|受付を24年やって
服装はこちらです。
健康診断は何を着ていけばいい?|受付を24年やって、現場ですすめている服装
何分前に行けばいいのかは、こちらです。
健康診断は何分前に行けばいい?|健診の仕事を24年、早く行っても空いていない理由
当日、体調が悪かったら?
無理をしないでください。
このことは、別の記事に書きました。
健康診断の当日に体調が悪いとき、受けるべき?|受付を24年やって、言えずにいたこと
まとめ:食事はあける、薬は止めない
・食事は、最後にカロリーのあるものを口にしてから10時間以上あける
・気をつけるのは当日の朝ではなく、前の日の夜
・食べてきても、健康診断そのものはお断りしません。ただしバリウムと腹部の超音波は中止です。まず受付で言ってください
・水は、適度に飲んでいい。ただし量と時間の決まりがあります
・血圧の薬などは、自己判断でやめない
・細かい決まりは、受診票に同封されている案内と注意事項がいちばん確かです。同じ会社に勤めていても、健診を実施する会社が変わっていることがあります
受付で確認しているのは、この1年の体を見る機会を、そのまま使えるようにするためです。
せっかく受ける健康診断です。少しでも意味のあるものにしてほしいと、受付を担当していて思っています。
よくある質問
Q. 「空腹」は、朝ごはんを食べなければいいのですか?
A. 朝ごはんを抜くことではなく、最後にカロリーのあるものを口にしてから10時間以上あける、という意味です。夜遅くに食べた場合は、朝を抜いていても足りないことがあります。
Q. 水は飲んでもいいですか?
A. 適度に飲んでかまいません。がまんしすぎると、熱中症や脱水の危険があります。ただし、飲んでいい量と時間の指定があります。ぼくの会社の場合は、朝7時ころまでにコップ1杯程度です。何をどのくらい飲んでいいかは、お手元の案内を見てください。
Q. 血圧の薬は、朝に飲んでもいいですか?
A. 血圧の薬などは、自己判断でやめないでください。薬の種類によって扱いが違うことがあるので、迷ったら、届いた案内とかかりつけのお医者さんの指示に従ってください。
Q. 食べてきてしまいました。受けられませんか?
A. 健康診断そのものをお断りすることはありません。バリウムの検査と、腹部の超音波検査は中止になります。血液検査は受けられますが、参考値になります。まず受付で伝えてください。
Q. バリウムの検査は、午前と午後のどちらがいいですか?
A. 選べるなら午前が望ましいです。午後に受ける場合は、朝食に制限がつきます。何時までに何を食べてよいかは、届いた案内を見てください。
Q. HbA1cという検査があると聞きました。食べてきても大丈夫ですか?
A. 事業所によっては、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という、食事の影響を受けない血糖の検査が付くことがあります。ただし、バリウムの検査や、コレステロール・中性脂肪は食事の影響を受けます。基本は空腹で受けてください。
Q. 前の会社の健診では、ちがう説明でした。どちらが正しいですか?
A. 今回受ける健診の案内が正しいです。当日のやり方は、健診を実施する会社ごとに違うためです。同じ会社に勤めていても、健診を実施する会社が変わっていることがあり、それが従業員に知らされていない場合もあります。受診票に同封の案内と注意事項を、事前に読んでみてください。
参考
・労働安全衛生規則(e-Gov 法令検索) 第44条に、定期健康診断の項目が定められています
