健康診断の仕事を24年やっています。
健診の日は、検診車を運転して現場に着き、会場をつくるところから始まります。受付も担当します。
ぼくの仕事は、病院や健診センターではなく「巡回健診」です。会社や地域の会場に、健診のほうから出向いていく形です。
受ける側からすると、病院の健診も巡回健診も「健康診断」でひとくくりだと思います。でも、現場に立っていると、違うところがいくつかあります。
今日は、受付を担当する側から見た「巡回健診ならでは」のところと、会社の担当者から見た違いを書きます。
巡回健診って、そもそも何ですか?
健診をする側が、検診車や機材を持って会場まで行き、その場で健康診断をする形です。
受ける人は、病院に行かなくても、職場や近くの会場で受けられます。
病院や健診センターの健診と、何が違いますか?
いちばん大きいのは、その日のためだけに会場をつくることです。
病院や健診センターは、健診のための部屋が最初からあります。巡回健診は、ふだんは別の使い方をしている場所に、健診の流れを一日だけつくります。
だから、病院なら当たり前にあるものが、巡回健診では無いことがあります。その代表が、次の「着替える場所」です。
着替える場所はありますか?
巡回健診には、着替えるスペースがほとんどありません。ここが、病院や健診センターとの大きな違いです。
着替えが必要になるのは、主にレントゲンです。全部の検査で着替えるわけではありません。
着替えが必要になるのは、おおむね女性です。下着の金具やワイヤーが写ってしまうためです。見落とされやすいのが、肩紐の調整具です。プラスチックでも同じです。
逆に、まくり上げれば済む検査もあります。
・心電図:胸が見えるところまでと、手首・足首
・腹囲:おへそのまわり
・診察:聴診のとき
服装については、別の記事にくわしく書きました。
健康診断は何を着ていけばいい?|受付を24年やって、現場ですすめている服装
検診車に乗るとき、靴はどうなりますか?
検診車は、土足禁止のことが多いです。
身長・体重をはかるときや、バリウムの検査のときには、靴を脱いでもらいます。脱ぎはきしやすい靴のほうが、当日は楽だと思います。
検診車の運転手の仕事については、こちらに書きました。
健康診断の「検診車の運転手」を24年やっています|資格は大型免許ひとつ、それでも続いた話
冬は、重ね着して行っても大丈夫ですか?
重ね着は問題ありません。検査ごとに、必要なぶんだけ脱いでもらいます。
北海道の冬は、会場まで歩くだけで冷えます。無理に薄着で来なくて大丈夫です。
外してもらうものも、いくつかあります。
・ネックレス:レントゲンのときは外してもらいます
・腕時計:心電図のとき
・メガネ・コンタクト:眼底の検査のとき
・湿布・カイロ:貼ったままにしません
・髪:レントゲンのときにまとめてもらうことがあります
当日の順番や時間は、どう決まっていますか?
最近は、時間割を組んで、朝の混雑を減らしている現場が多いです。
健診は、朝いちばんに人が集まって混む日があります。混む日は30人以上並ぶこともあり、混雑しているときは、列の最後の方が30分以上待つこともあります。
時間割があると、受ける側の待ち時間は減ります。そのかわり、時間どおりに進めなければ、というプレッシャーを、ぼくは感じています。これは、あくまでぼくの話です。
もし時間割が案内されていたら、その時間に合わせて来てもらえると、とても助かります。
受ける時間帯(午前か午後か)については、別の記事に書きました。
健康診断は午前と午後、どっちがいい?|受付を24年やって、午前をすすめている理由
検査の内容は、どこでも同じですか?
同じではありません。
健康診断は、基本的には労働安全衛生法という法律をもとに行われています。第66条に、事業者は労働者に対して、医師による健康診断を行わなければならない、と書かれています。そのうえで、当日のやり方は、健診を実施する会社ごとに違います。どの検査を受けるかは、勤め先ごとに違います(加入している健康保険組合によっても変わります)
「会場ごと」ではなく「健診会社ごと」です。ここは大事なところです。
たとえば血液検査でも、事業所によっては、食事の影響を受けにくい項目(HbA1c)がつくことがあります。ただ、基本は空腹で受けることがすすめられています。
いちばん正確なのは、事前に届く案内です。迷ったら、案内を見てください。案内に書いてないことは、受付で聞いてもらえれば大丈夫です。
受付で聞かれることは、こちらにまとめました。
健康診断の受付では何を聞かれる?当日の持ち物と、困らないための準備|受付を24年やって
前の日に、見ておくと楽なことは?
ここまでの話を、受ける側の準備に置きかえると、次のようになります。
・届いた案内を、もう一度読む(当日のやり方は健診会社ごとに、検査の内容は勤め先ごとに違います)
・服装は、脱ぎ着しやすいものにする(レントゲンでは金具やワイヤーが写ります)
・靴は、脱ぎはきしやすいものにする(検診車は土足禁止のことが多いです)
・時間割が案内されていたら、その時間に合わせて行く
どれも特別なことではありません。
会社の担当者から見ると、どう違いますか?
ここまでは、受ける側から見た話です。
もうひとつ、会社で健診の担当をしている方から見ると、違いがあります。ぼくが考えている、巡回健診と健診センターのいちばん大きな違いは、ここです。
一日でほぼ終わるか、終わらないか。
健診センターは、従業員がそれぞれ予約して受けに行く形です。巡回健診は、日程を決めて、その日にまとめて受けてもらう形です。似ているようで、担当者の仕事はかなり違うと、ぼくは思っています。
ここから先は、受付を担当していて、ぼくが感じていることです。
健診センターの場合
良いところは、従業員が自分の業務の都合に合わせて予約できることです。
そのかわり、全員が受け終わるまでに期間がかかります。誰が受けて、誰がまだなのか。担当者はそれを追いかけることになります。ここの負担は、かなりのものだと思います。
巡回健診の場合
良いところは、短期間で、従業員の健診を終わらせられることです。
もちろん、準備はあります。会場をおさえる。検診車を停める場所を確保する。従業員に日程を知らせる。やることはたくさんあります。
でも、そのほとんどが、その一日で終わります。
そのかわり、会社が希望する日程で実施できないことがあります。検診車の台数には限りがあるからです。
どちらが良い、という話ではありません
担当者の考え方や、会社の業務の形で、都合は変わります。
まとめ
巡回健診は、その日のためだけに、会場をつくる健康診断です。
だから、着替える場所がほとんど無かったり、検診車が土足禁止だったり、病院とは違うところがあります。やり方も、健診会社ごとに違います。
会社の担当者から見ると、一日でほぼ終わるかどうかが、いちばん大きい違いだと思っています。
いちばん正確なのは、届いた案内です。
よくある質問
巡回健診でも、バリウムの検査はありますか?
会場や健診会社によります。ある場合は、検診車の中で受けてもらいます。
食事をとってきた場合、バリウムの検査は中止になります。腹部の超音波検査が入っている場合も、同じく中止になります。ただ、健康診断そのものが受けられなくなるわけではありません。ほかの検査は受けられます。食事をとったかどうかは、受付で必ず確認しています。
水は、がまんしなくて大丈夫です。熱中症や脱水のほうが危ないからです。ただし、飲んでいい量と時間には決まりがあります。ぼくの会社の場合は、朝7時ころまでにコップ1杯程度です。指定は健診会社によって違うので、届いた案内を見てください。
血圧などのお薬は、自己判断で止めないでください。気になる場合は、案内に書かれた連絡先や、かかりつけの医療機関にご相談ください。
巡回健診の結果は、その場でもらえますか?
結果は、あとから郵送で届きます。受付で結果をお渡しすることはありません。
病院の健診と、どちらがいいですか?
どちらがいい、とは言えません。巡回健診は、職場や近くの会場で受けられるのが良いところです。そのぶん、着替えの場所など、病院とは違うところがあります。
参考にした資料
e-Gov法令検索「労働安全衛生法」(第66条)
日々の現場での気づきは、Xでも書いています。
@genba50ai
